AIは質問に答える時代から、仕事を任せる時代へ――ChatGPT・Muse・Claudeなど最新AIの違い

オフィスでAIを活用する経営者 AI活用
奥久 惠美子
奥久 惠美子

有限会社ジャムティガ 代表/コンサルタント

2026年のAIを見ていると、各社の発表に共通する変化があります。AIの役割が「質問に答えること」から「依頼された仕事を進めること」へ広がっているようです。例えば、「来週の経営会議に向けて、先月の売上を整理し、気になる変化を調べ、説明資料を作ってほしい。」と人でなくAIに頼むことが出来るようになっているのです。
従来はAIが分析方法を説明し、人がExcelやPowerPointを操作していましたが、今は、許可したファイルやアプリをAIが使い、成果物の作成まで進めるサービスが登場しています。
ですから今経営者にとって重要なのは、AIのモデルの名前を覚えることよりも、AIにどの仕事を、どの範囲まで任せられるかを知り、人に何をさせるかを考えることです。

「AIエージェント」は、今までのAIと何が違うのか

一般的なチャット型AIは、質問に答えたり文章案を作ったりします。これに対し、AIエージェントは目標を受け取り、作業を分解し、許可されたツールを使って複数の工程を進めます。調査、データ整理、文書作成、予定調整といった仕事を連続して扱えるのが特徴です。ただし「自律的」といっても、人が何も確認しなくてよいという意味ではありません。何を閲覧できるか、どこまで変更できるか、送信や購入を誰が承認するかが、実用性を左右します。

主要AIサービスの分類と役割(2026年10月)

AIには、質問に答える対話型から、専門的な作業を支援するもの、複数の工程を進めるAIエージェントまで、さまざまな種類があります。主なサービスと経営者の活用例を整理しました。

提供企業 AIサービス 主な役割 経営者の活用例
OpenAI ChatGPT 対話・調査・分析 経営相談、資料作成、事業計画の検討
OpenAI Codex プログラム開発支援 業務システム開発、プログラム修正
OpenAI Dots 継続的な業務支援・代行 定期調査、情報整理、進捗管理
Meta Muse AIアシスタント・エージェント 予定管理などの業務支援
Anthropic Claude 文章作成・資料分析・業務支援 契約書の分析、長文資料の整理
xAI Grok 対話・情報収集 話題の把握、情報の整理
Google Gemini 対話・調査・Googleサービス連携 Gmail、Googleドキュメント等を使った業務
Microsoft Copilot Microsoft 365の業務支援 Word、Excel、Outlook、Teamsでの業務

※2026年10月時点の概要です。各サービスの機能や利用条件は、プラン・地域・設定などによって異なります。

主要サービスは「得意な仕事」で見分ける

OpenAI:ChatGPT、Codex、dots

Meta:Muse――予定管理から実際の手続きまで

Metaは10月23日、パーソナルAIエージェント「Muse」の日本提供開始を発表しました。Museはメールやカレンダーなどと連携し、予定調整、旅行の計画・予約、ブラウザー上のフォーム入力などを進めることを想定しています。アプリを閉じた後も作業を続け、メール送信や購入など承認が必要な場面では通知します。日本ではiOS、Android、muse.aiから利用でき、基本機能の多くは無料、有料プランもあると説明されています。なお「Muse Spark」はMuseを支えるAIモデルの名称で、Museというエージェントそのものとは区別しておきたいところです。[4]

Anthropic:Claude――報告書や資料作成を一続きの仕事に

Claudeには、ファイルやツールを使って複数工程の仕事を進める「Cowork」の機能があります。9月16日には、チャットとCoworkを統合して、利用者がモードを細かく選ばなくても仕事を依頼できる方向を発表しました。報告書と会議用スライドを同じ依頼から作る、契約書の一次レビューを整理する、定期レポートを作るといった用途が示されています。統合はPro・Maxから順次展開され、10月23日にはEnterpriseでも一般提供となったと公式に更新されました。機能によっては有料契約や管理者設定が必要になります。[5]

xAI:GrokとGrok Bot――調べるAIから、動くAIへ

Grokはチャット、音声、画像・動画生成などに対応しています。8月11日に発表された「Grok Bot」は、専用のクラウド環境でアプリやWebサイトを操作し、営業のフォローアップや社内業務などを引き受けるエージェントのベータ版です。10月にはGrok、Grok Bot、コーディング関連サービスなどをまとめた「The X Subscription」も発表されました。Grokのチャット機能とGrok Botの作業代行機能は同一ではなく、Botの利用資格・枠は契約プランと提供状況の確認が必要です。[6][7]

Google:Gemini――Gmailやスプレッドシートをまたぐ仕事

Googleは10月8日(米国時間)、業務向けの「Geminiエージェント」を発表しました。Gmail、Googleドライブ、ドキュメント、スプレッドシート、カレンダーなど、普段使う業務環境で作業するという構想を示しています。10月14日にはGeminiアプリ向け「Gemini 4 Argon」を発表し、Google AI Pro・Ultraの利用者が複雑なタスクを依頼できると案内しました。ただし、個人向けGeminiアプリの機能と、企業向けの新しいエージェント構想は提供条件が同じとは限らないため、契約するサービスごとに確認してみてください。[8][9]

Microsoft:Copilot――Word、Excel、Outlookの仕事に組み込む

Microsoft 365 Copilotは、は、WordやExcel、PowerPoint、Outlookなど、既に使っている業務アプリの中で文書の修正、分析、資料作成を進める方向に進化しています。3月に発表した「Copilot Cowork」はAnthropicの技術も活用し、複数アプリにまたがる長時間の作業を扱うものだが、発表時点では限定的な研究プレビューとFrontierプログラムを通じた展開でした。AIエージェントの権限や動作を組織で管理する「Agent 365」も打ち出しています。一般的なCopilotのチャット、Microsoft 365 Copilotの有料機能、Copilot Coworkは利用条件が異なります。[10]

AIを活用しながら、情報整理や資料作成、業務の検討を進めるイメージです。AIは質問に答えるだけでなく、日常業務の一部を支援し、経営者の判断や作業を補助する存在へと変化しています。

中小企業なら、まずこの3つの仕事を任せてみる

第一は「経営会議の準備」です。売上・粗利・資金繰りの資料を、個人情報を除いた検証用データで渡し、「前年同月との違いを整理し、原因の仮説と確認すべき項目を一枚にまとめる」と依頼します。数字の集計と論点整理をAIに任せ、原因の確定と経営判断は社長や担当者が行います。

第二は「営業の取りこぼし確認」。商談メモや対応履歴から、返事が止まっている案件、次の連絡が必要な案件、見積もりの更新待ちを一覧にします。最初は送信せず、返信案までを作らせると運用しやすくなります。

第三は「定例業務の下準備」。毎週の競合情報収集、業界ニュースの要約、採用面接の質問案、社内マニュアルの改訂案など、繰り返し発生し、成果物を人が点検できる仕事が適しています。

「何ができるか」より「何を許可するか」を先に決める

AIが実際に操作できるようになるほど、情報管理は単なる入力上の注意では済まなくなります。
導入時には、
①顧客名・契約情報・口座情報などの機密データをどこまで渡すか
②メールやクラウドストレージへのアクセスを閲覧だけにするか編集も認めるか
③外部送信・予約確定・購入・削除を誰が承認するか
④操作履歴と利用料金をどう確認するか
を最初に決めておきたいところです。
AIが閲覧したWebページやメール本文に紛れ込む不正な指示にも備え、権限は必要最小限から始めるのが現実的です。
各社とも保護機能を説明しているが、設定内容や契約プランによって管理できる範囲は異なります。

AIが情報収集、データ分析、資料作成、スケジュール管理、関係者への連絡、業務の実行まで、複数の作業をつないで進めるイメージです。AIエージェント化が進むことで、単発の回答ではなく、一連の仕事を任せる使い方が広がっています。

経営者の仕事は「作業をする」から「仕事を設計する」へ

これからのAI選びは「どのAIが一番賢いか」という比較だけでは足りません。
自社のメール、表計算、顧客管理、Webサイトなどとつながり、どこまでの仕事を任せられるかが重要になります。
全社を比較するのは大変なので、まずは週に一度の定例業務を一つ選び、成果物の品質、削減できた時間、確認に必要な手間を測るといった小さな実験を繰り返すことで、AIに任せる仕事と、人が責任を持って判断する仕事の境界が見えてきます。
AIエージェント時代に経営者が身につけたいのは、難しい操作方法よりも「何を、どの条件で、誰の確認のもとで任せるか」を設計する力です。

参考資料(各社公式発表)

  1. OpenAI「ChatGPT は、あなたの最も意欲的な取り組みのパートナーに」(2026年7月9日)
    https://openai.com/ja-JP/index/chatgpt-for-your-most-ambitious-work/
  2. OpenAI「Codex for every role, tool, and workflow」(2026年6月2日)
    https://openai.com/index/codex-for-every-role-tool-workflow/
  3. OpenAI「dots のご紹介」(2026年9月29日)
    https://openai.com/ja-JP/index/introducing-dots/
  4. Meta「パーソナルAIエージェントMuseを日本で提供開始」(2026年10月23日)
    https://about.fb.com/ja/news/2026/10/muse-personal-ai-agent-launches-in-japan/
  5. Anthropic「Claude Cowork and chat are now one Claude」(2026年9月16日、10月23日更新)
    https://claude.com/resources/articles/cowork-is-now-claude
  6. xAI「Introducing Grok Bot」(2026年8月11日)
    https://x.ai/news/introducing-grok-bot
  7. xAI「Introducing The X Subscription」(2026年10月12日)
    https://x.ai/news/x-subscription
  8. Google Cloud「Gemini at Work 2026 で Gemini エージェントを発表」(2026年10月9日・日本語版)
    https://cloud.google.com/blog/ja/products/ai-machine-learning/welcome-to-gemini-at-work-2026/
  9. Google「Gemini 4 Argon が Gemini アプリに登場」(2026年10月14日)
    https://blog.google/intl/ja-jp/company-news/technology/gemini-4-argon-gemini/
  10. Microsoft「Powering Frontier Transformation with Copilot and agents」(2026年3月9日)
    https://www.microsoft.com/en-us/copilot/blog/2026/03/09/powering-frontier-transformation-with-copilot-and-agents/

※サービスの提供地域、利用プラン、機能は2026年10月30日時点で確認した各社公式発表に基づきます。利用画面や契約条件は導入前にご確認ください。